Food-Art-Craft (2025)

Food-Art-Craft は、筑波大学芸術専門学群の授業「大学を開くアート・デザインプロデュース演習(ADP)」から生まれた、東弘一郎助教を主導とするプロジェクトチームです。2025年度は、学生たちは「食」と「アート」を切り口に、つくばという地域の歴史・風土・人々の暮らしに着目しながら、リサーチから企画、制作、発表までを一貫して担いました。

そして、Food-Art-Craft の1年間の集大成となったのが、小田地域と連携して実施した《巨人のおせんべい作り》です。この企画は、つくばに伝わるダイダラボッチ伝説をもとに、巨大な拳型の装置で地元の米をプレスし、おせんべいづくりの体験へとつなげるイベントでした。
目指したのは、子どもたちに地元のことをもっと知ってもらうことです。そのためいきなり体験に入るのではなく、まず人形劇を制作・公演し、ダイダラボッチ伝説を親しみやすく、わかりやすく紹介する導入を設けました。物語は、ダイダラボッチの登場によって地域にとって前向きな結末へ向かう内容とし、子どもたちが親しみを持てるよう工夫しました。また、親子連れの観客を想定して、大人も思わず笑ってしまうような軽やかな要素も織り込んでいます。
当日は暴風に見舞われ、せっかく制作したセットが壊れてしまう場面もありました。しかしそれさえも「ダイダラボッチの仕業」として受け止めることで、かえってイベント全体の世界観を強める結果となりました。

この企画のもう一つの核となったのが、巨大な拳型の装置です。装置は木の拳と鉄の躯体によって構成されました。木の拳は骨組みに欅材を貼りながら形を立ち上げ、鉄の躯体は鋼材の切り出し・溶接・研磨・組み立てを繰り返しながら仕上げていきました。制作は決して順調ではなく、部材の調整や組み立て上の問題にも直面しましたが、試行錯誤を重ねるなかで、装置は少しずつ現実の形になっていきました。
当日のおせんべい作りでは、拳を持ち上げているあいだに米を広げ、拳を2〜3回落としてプレスし、その後バーナーで直接あぶって仕上げました。大きな米の塊が巨大な拳につぶされ、焼かれ、食べられるものへと変化していく過程そのものが、この企画の魅力でした。巨大な装置によるダイナミックな体験と、仕上げの繊細な調理作業が一つの場に共存していたことも、この取り組みならではの特徴といえます。

Food-Art-Craft の1年間は、アートを単なる鑑賞の対象として提示するのではなく、人と人、人と地域をつなぐ媒介として捉え直す試みでした。フィールドワークから企画・制作・発表に至るまで、学生たちは協働し、対話し、調整しながら、一つの表現を社会のなかに立ち上げていきました。
この活動は、ADP の理念を具体的に体現するものであると同時に、地域とともに表現を育てていくプロジェクトの一つのかたちを示すものとなりました。

担当教員:東 弘一郎(芸術系助教)
チームリーダー:中島 聡太
プロジェクトマネージャー:山口 紗桜
会計:丹澤 日南子
設計/造形:岩尾 帆高・立松 里々子・古坊 皆人・長瀬 理央
営業:市耒 雅人・柳井 柚里亜・山田 かんな
食品管理:志喜屋 杏・長谷川 みさき
広報:桐山 心春・吉田 佳永